”良工(りょうこう)は先(ま)ずその刀を利(と)くす、能書(のうしょ)は必ず好筆(こうひつ)を用う。”
出典:遍照発揮性霊集

miti

腕のある職人は何よりも先に道具を研ぎ、優れた書家は良い筆を使用します。
仕事の準備を万全にし、道具を大切に扱うことが一流に通じるのです。

一流の職人は一流の道具を使います。

弘法筆を選ばず

という言葉がありますが、多くの人は、

一流の人は道具を選ばずともいいものが生み出せる

というような意味合いにとらえてしまっていますが、実は、

達筆な人は、筆の善し悪しがわかる

というのが正しい意味です。

考えてみてください。

一流の書家が百均に売っているような筆を使いますか?

一流の大工がホームセンターで激安で売っている鉋(かんな)を使いますか?

一流のシェフが使っている包丁は一般家庭で使われているものですか?

一流と呼ばれる人は一流の道具を使っていますし、道具のメンテナンスも怠りません。

技術に見合った道具、道具に見合った技術が必要なのです。

ここでわかりやすい話を一つ。

車の運転免許を取得したばかりの人が、最高級の車がいいからと、フェラーリやポルシェに乗ったところで、その性能をもてあまし、乗りこなすことはできませんし、事故を起こしてしまう可能性もあります。

同様に、F1のドライバーがタントやワゴンRに乗って、持つ技術を発揮しようとしても車の性能が低すぎて、持つ力を十分に発揮することはできません。

初心者は道具の善し悪しはわかりませんが、一流の人は道具の善し悪しを見極め、持つ性能を存分に使いこなすことができるということです。

道具の善し悪しを見極められる人は、当然のことながら道具を大切に扱っています。

道具を大切に扱うことで、その道具の善し悪しを見極められるようになり、自らの技術も上達していくのです。

今の自分が少しだけ背伸びするような道具を使うようにすれば、道具を大切にする心が育ち、道具を使いこなそうという心が、技術を磨く原動力となるのです。

何かを人に提供するときには、オーバープロミス・オーバーデリバーの精神が大切なように、道具についても、この考え方を活かすことはできるはずです。